京都パイル創生期 珍奇談①

 

仕事が増えてきて西陣の工場が手狭になってきたところに、四軒隣にあった銭湯から「排水が臭くて困るわ」と言われ、移転を考えるようになりました。この頃から、世の中で環境汚染や公害問題に対する意識が高まってきました。

 

当時、取引のあった太陽神戸銀行の紹介で、もと顔料工場で空いていた吉祥院工場を購入しました。それが昭和四二年のことです。

吉祥院に移った時に、これから環境汚染に対する目が厳しくなるだろうから、うるさく言われる前に対策しておこうと排水の浄化処理設備を設置しました。でも、排水のアルカリを中和するのに発生する匂いが硫黄臭で、それがまた問題を呼んでしまったんです!

 

近所に住んでいたタチの悪いチンピラに目を付けられてしまったんです。そいつは細くてガリガリで、女性もののハンドバッグに女性もののサンダルを履いたオカマ風のチンピラで、後から知ったのですが近所でも有名な鼻つまみ者でした。

そのチンピラが「くさい臭いがするやんけ! 社長はどいつや!?」と言って会社に入ってきたんです。「わしや!」と出ていくと、なんとそいつはハンドバッグから刺身包丁を取り出したんです!

その時は焦りましたね。思わず後退ると、刺身包丁を持って追いかけてくるんですよ! すぐに警察を呼んで事無きを得ましたが、今思い出してもゾッとします。

 

この時の出来事は京都パイル創生期の「三大あり得ない話」の一つです。え? あと二つあるんか!?って思われますよね? はい、あります(笑) その話はまたの機会に。あと二つで済むかな・・・。